「さぁ、湯船から出て。もう一回洗うよ」
「もういっかい」
少女は静かに湯船から出た。
「髪の毛もね。ゆきちゃんの髪、長いから」
シャワーで少女の髪を濡らす。ちょっとホラー映画のようだ。
髪をシャンプーで洗い、リンス、トリートメントとケアしていくと、少し艶が出てきた。
「うん。綺麗になってきたね」
「きれい?」
少女はふっと、私を見た。
そうだ。まだ幼い十五歳の娘なのだ。綺麗になることや、お洒落に興味がある年頃だろう。まぁ、私も興味があるが、どうも「会社のため」「社会のため」みたいに思ってしまう。そんな風に考えるようになったのは、就活をしてからだろうか。
「綺麗だよ。ゆきちゃんの髪は綺麗。ゆきちゃん自身は、うーん、カワイイ系かな」
「かわいいけい」
「そ、カワイイ系。体、洗おうね」
私はこくっと唾を飲み込んだ。痩せ細った身体。皮と骨だけのような腕。痛々しい体付き。だがそんな少女に私は欲情してしまう。
仕事ばかりしてカノジョを作ってこなかった私。バーに行って、女性に言い寄られても次の日のタスクが頭から離れず帰ってきてしまうような、情けない、勇気も無い女だった。
それがどうしてこんな少女を拾ってくるなどという大胆な行動が取れたのだろうか。
少女の暗い瞳。
コンビニの前で力尽きて、足を投げ出し座っていた少女。そんな女の子に何故魅力を感じたのか。
確かにこうして汚れを落としてみると、少女の肌は少し白く、日々の汚れをもっと落とせばもっと白さが目立つ子なのかもしれない。
この痩せ細った身体も少し食べさせて肉を付ければ、年頃の少女らしい娘になるのかもしれない。
しかし今、この少女に夢中になる理由はなんなのだろう。
百年の恋も冷めるような汚れと匂い。そして男性達に蹂躙された精液の臭い。この少女を拾ったり、買ったりした男性達は、誰一人この子の人生など考えなかったのだろうか。
泡立てたタオルで優しく優しく少女の体を洗う。
彼女は暗い瞳で私をじっと見つめた。喜んでくれているのだろうか。表情は読み取れなかった。
■ 続く