「お買い物していこうか。何が食べたい?」
「なに、が、たべたい?」
少女は私の言葉を繰り返し、首をかしげた。
私はにっこりと笑い、手をぎゅっと握った。
「おでんにしようか」
「おでん、知ってる。コンビニでね、売ってるの」
「うん。コンビニのおでんじゃなくっておうちのおでんだよ」
「おうちのおでん……まつりが作るの?」
「おでんセットを温めるだけだけどね……」
正直に言うとちょっと空しい。鳥の手羽元ぐらいは足すか、と思う。
「おうちのおでん……」
「ママはおでんを作ってくれた?」
「ママは作らない。いつもコンビニで食べるの。おにぎりとかパンとか」
「私もコンビニのおにぎりとかパンも食べるよ。でも今日はスーパーでおでんを買っちゃおうかな。二人分だもんね」
「まつりもママがいないの?」
「私のお母さんは別の所に住んでいるのよ。お父さんと一緒にね」
「パパは……いない。昔からいない。ママはおじさんがパパになるって言ってたんだけど、パパになる前にママ、死んじゃった」
「ママはどうして死んじゃったの?」
「お乳の病気。あくせいしゅようっていうんだって。ママが言ってた」
そして少女は俯き。
「泣いてた。ママ。イジワルなおじさんも泣いてた」
「ゆきちゃんも泣いた?」
「……泣かない。ママを支えないといけないから。ママは泣き虫なんだ。だからいつも助けてあげないといけないの」
続く