お母さんを支える。
そんな風に私は思ったことがあるだろうか。今、住んでいるマンションも両親が買ってくれたもの。学費も両親が出してくれたもの。両親が私を支えてくれるのは、当然だと思って生きてきた。
少女の母親は弱い女だったのだろう。しかし再婚を夢見て結婚している男と付き合っていた。
泣き虫で、こんなに小さな……よく見ると十五歳にしては小さすぎる身長の少女を自分の支えにして生きてきた女。ママと呼ばれながら、その役目は果たしていなかった女。
私は少女と繋がった手をぎゅっと握った。
「ここがスーパー。来たこと、ある?」
私がそう尋ねると、少女はふるふると首を横に振った。
「そっか」
少女の家はこの近辺ではないらしい。いや、少女の母の恋人が住んでいた家、というべきだろうか。
マルエツに入り、私はちくわぶと、二人用のおでんパックと鳥の手羽元を籠に入れた。
小さな日本酒とほんだしとこんぶも入れる。ご飯パックを入れるかどうか悩んだが、まずは食べやすいおでんを食べさせてから考えようと思った。
そして牛乳と食パンを入れる。
子供の頃、病気の時、お母さんはよく温かい牛乳にパンを浸して食べさせてくれた。胃が弱そうな少女もこれなら食べられるはずだ。
私が会計をする時、少女を見てレジ係が顔をしかめた。失礼な奴だ。
私は素早く、というか手荒く材料を袋に入れ、マルエツを出た。
そして隣のマンションへと入っていく。
「ここが私の家」
「まつりのいえ」
私はエレベーターに向かい、階数ボタンを押した。
そして少女と一緒にエレベーターを降り、部屋に入った。
廊下の電気を点ける。ほっとし、鍵を閉めた。
これでこの部屋には私と少女の二人きりになった。
続く