「……痩せてるね。ご飯、食べよう。一緒に温かいおでんを食べよう」
「……うん。ごはんね、えーとこのまえ、しらないおじさんがくれた。いたいこともされたけど、ごはんくれたから、いいひと。おなかいっぱいになるまで、たべさせてくれた」
私はドキっとした。少女をいやらしい、性的な目で見ているのはそのオヤジも自分も一緒なのではないだろうか。
この傷付いた少女を無理矢理襲うという妄想を持っていないと言ったら嘘になる。
加虐。
こんなにも自分の中に暴力性が潜んでいたのかと驚くほど、今、私は興奮している。濡れている。
ただ私は少女に同情もしている。私がもし、彼女と同じ境遇だったら、この歳まで生きていられるだろうか。実の母親からの虐待。母親の愛人からの虐待。放浪し、見知らぬ誰かからの性暴力。
そして少女は私の元へと流れ着いてきた。私は少女を、優しく包み込んで愛してあげたい。だがどうやったら彼女を愛せるのだろうか。この傷付き、言葉すら未熟な小さな娘を。
「背中と腕、洗えたよ」
私がそう言うと少女は立ち上がり、くるっと後ろを向いた。まだ毛が生え揃っていない秘密の場所が私の目の前に現れた。
私は高揚し、頬を染めた。
少女は真っ直ぐ目の前を見つめながら、股を開いた。
少女は私を挑発しているのだろうか。
ほら、触ってみろ、さわってみろ、と。
私は泡立ちが少なくなったタオルを持ったまま悩んだ。
手を伸ばしてしまおうか。
それとも少女に自分で洗うよう言うべきだろうか。
しかし自分で洗うよう言うのなら、最初から一緒にお風呂へと入らなければ良いのだ。少女はもう十五歳なのだから。小さくても十五歳なのだ。
私はごくりと唾を飲み込んだ。
洗わなければ。女の子の大切な場所なのだから。
私はそっと手を伸ばし、少女の性器をタオル越しに触れた。
優しく。やさしく。
陰毛はあまり生えていなかったが、大陰唇は腫れて捲り上がっていた。そして太腿の内側にもタバコの焼け跡を発見した。いくつも、いくつもある。
タバコを少女に押しつけた者は、一体どんな目で少女を見ていたのだろう。この大きな闇のような瞳を持つ少女を、人形かなにかだと思っていたのだろうか。
「……痛かったね」
私がそう言うと、少女は首をかしげた。
「ここ」
私が焼け跡に触れると、少女はびくんっと体を震わせた。
「タバコの火を押しつけられて、痛かったね」
「いたくない。ママはわらってた。いっしょにわらった」
「ううん。タバコの火がね、じゅって押し付けられた時は、笑うんじゃなくてね、痛いって言うんだよ」
「いたい……?」
「そう、痛いって。大きな声を出して叫んでもいいし、喚いてもいい。泣いてもいいんだよ」
「おおきなこえをだすと、ママがたたく。おおきなこえをだしちゃいけないって」
「ううん。もう大丈夫。大きな声を出しても叩くママはもういない。大きな声で泣いても、叩くママはもういない。だからね、痛かったら痛いって言って、大きな声を出すんだよ」
「おおきなこえ」
「わって」
お風呂の中で私は少し大きな声を出した。しかし人は出し慣れていない声をすぐ出せるものではない。
「わっ」
少女の声は私のより小さく、か細かった。
「あはは、私もなかなか大きな声が出せないなぁ。わーぁーあーって」
「ぁーあーああー」
「そうそう、もっと大きく出してもいいんだよ。痛いことする人は悪い人だからね。大きな声を出して驚かせてやらなきゃ」
「いたいことするひとはわるいひと?」
「そう」
「ママにもいたいことされた」
「痛いことした時のママは悪い人になっていたんだよ。痛いことする人に良い人はいない」
私は話しながら、優しく少女の陰部を洗った。内側には精液がこびりついて、ガビガビになっていた。泡で優しくこする。
「ひゃあ」
「あはは、くすぐったかった?」
「……くすぐったい」
「ごめんね。でもゆきちゃんの大事な場所だからね。ちゃんと洗っておかなきゃ」
「このまえのおにいさんもそういってた」
「そう。その人は優しかった?」
「……たくさん、いたいことした。おおきなぼうやたまをいくつもいれるひと。きもちいい? きもちいい? っていう。でもきもちよくなかった」
「そう。ここは赤ちゃんを産む場所だから、大切にしなきゃ」
「……!」
「赤ちゃんはね、ここから出てくるんだよ。ゆきちゃんもママのここから産まれてきたの」
「ママのここから……。あかちゃんはうまれるとき、ちいさいんだね」
「うーん、多分、今ゆきちゃんが考えているより大きいよ」
「!」
生気のない黒い少女の瞳が一瞬キラキラと光り、大きくなった。
「ふふふ、驚いた?」
「……おどろく……?」
「ゆきちゃんの瞳が、わってキラキラした。驚いた証拠だよ。ゆきちゃんのママはね、痛いこともするけど、自分も痛みを感じながら大好きなゆきちゃんを産んだんだよ。でも、だからといってゆきちゃんに痛いことをするのは許されることじゃないけどね」
「ママはうんだとき、いたいいたいっていったのかな」
「うん。叫んだと思う。ゆきちゃんを大切に思いながら産んだんだよ」
でまかせかもしれない。子供が出来てヒステリックになって、恨んだかもしれない。でも、それでも少女の母親は十ヶ月も赤ちゃんを守り、産んだのだ。
「たいせつ。たいせつ。ママ、たくさんしゃしんをとってくれた。えすえぬえすにのせるんだって。しゃしんはおかねになるんだって。パン、かってもらえた」
もしかしたらキッズポルノ? と思ったが、少女に言うのは止めた。

■続く