■ 16

私は寝間着を着て、部屋に少女用の寝間着と下着を取りに行った。旅行用鞄の中に入っている服を見ながら、私ははっとした。
もし少女と一緒に暮らすことになった後に出張が決まったらどうすればよいのだ。この少女は一人で暮らせるだろうか。
少女が少し目を細め、不安そうに私を見ている。彼女を不安がらせてはいけない。
「はい、下着と寝間着。新品だよ。でも少し大きいかも」
私が服を渡すと、少女は目を見開き、喜んでいるようだった。
「しんぴん……」
「うん。出張用に買ってあった私の服だから、少し大きいと思う。ごめんね」
「しんぴん……」
少女はゆっくり下着に足を通し、ぐっと穿いた。緩くて少し腰から落ちる。
「……やっぱりちょっと大きいね。ごめんね」
それから少女は寝間着に袖を通し、ズボンを穿いた。
「ぶかぶかだけど、可愛いね。ちょっと袖を折ろうか……ほら、ぴったりになった」
着終わると、少女はゆっくりと回った。私に寝間着姿を見せているようだった。
「しんぴん……」
「新品初めて? ……さすがにそんなことはないかな。似合っているよ」
「にあってる……」
胸元に小さな桜模様が縫い付けてある白い寝間着。その刺繍が少女のように儚かった。
「明日にでもゆきちゃん用の下着とか服を買ってこないとね。さ、おでんを食べようか」
「おでん」
おでんは少女の好きなアイテムらしい。彼女は黒い瞳をぱぁっと輝かせた。
「上手く出来ているといいんだけどね。鳥の手羽元にちゃんと火が通っているかな」
私はテーブルの上を拭き、夕食の支度をした。来客用の箸を出す。いつもは家族が遊びに来る時に使っていたのだが、今日は少女用だ。
この深淵の闇を見つめている少女は来客なのだろうか。それとも「私の少女」になってくれるのだろうか。そしていつか……私の女になるのだろうか。
おでんを並べながら私は少女の将来について考えていた。

■ 続く