歌舞伎町から新宿駅東南口へと向かうとGAPのフラグシップ店が見えてきた。
「さて、どの服がいいかな。ゆきちゃんはどんな服が好き?」
「…………どんな……ふくが……すき……?」
少女は両手を後ろに回し、首を傾げた。
「うーん、選べないかな」
「ママの……おふる……すき……」
そう言うと、少女は半袖シャツの裾をぎゅっと握った。
「ちょっといい? これどこのブランドかな」
襟の裏側には付いていたタグを切った跡があった。
「ん~、ブランドのタグが取れてるね。ま、GAPでいいか」
もしかしたらユニクロとか、FOREVER21とかH&Mとかの服なのかもしれない。ただ私がそれらの店舗に入った事がないので、分からない。ビックロは入ったことがあるが、ユニクロはほとんど見ない。
こういう時、服のブランドが分からない自分がもどかしい。
「GAPはさ、LGBT、つまりセクシャルマイノリティーを応援している企業なんだよね。知ってる? セクシャルマイノリティー」
「……?」
「知らないかな。レ、レズビアンとか、ゲイとかバイとか、トランスジェンダーとか」
「あ、しってる。レズのどうがとった……」
何歳頃に撮ったのかは聞くのを止めよう。
「まつりはレズなの?」
少女の単刀直入な質問に、私は真っ青になった。でも話さないわけにはいかない。
「…………うん」
「そう……」
少女は少し力を抜いて、私の腕に、右腕を絡ませてきた。
「おんなのひと……まつり……すきだよ……やさしいから……どうがでからんだひとも、やさしかった。しんぱいしてくれた……」
どうも少女には『レズビアン=優しい』というのが刷り込まれているようだ。少女と絡んでいたレズビアンAV女優さんに感謝しなければ、と思った。
少女の柔らかい胸が腕に当たる。無意識にやっているのか、計算してやっているのかは分からない。ただ私の心臓はドックン、ドックン、ドックンと早く鳴り響いていた。

■ 続く