特に親と確執があるわけじゃない。しかし少女との関係は親に知られたくない。そう思ってしまうのだ。
しかし年末の伊勢丹。考えてみれば買い出しに親が来ているかもしれない。
自分一人で少女を匿いたい気持ちと、少女の問題を親と共有したい気持ち。それらが入り乱れて私は伊勢丹に足を運んだのかもしれない。
「これは四季様。いらっしゃいませ」
私は今日初めて、伊勢丹店員の挨拶が鬱陶しいと思った。しかし笑顔で、こんにちは、と挨拶した。
私は馴染みの店員から離れ、少女と靴売り場を見て回った。
服に合う白い靴を私は探した。それが少女に気に入られているかどうか、いまいち分からないまま。
するとTOD’SのGOMMINO DRIVING SHOES IN LEATHERが目に付いた。白い皮靴に黒い皮の飾りと金具が付いていて、少女に合うなと思った。
「ゆきちゃん、これなんてどう?」
少女に手渡す。
少女は恐る恐る靴に触り、上下左右から見る。TOD’Sと刻印の入った金具をつんつんと突っついてみる。金具の周りの黒い部分に触れてみる。
「白と黒と金具なんだけど、シックすぎかしら」
少女はぶんぶんと首を横に振った。気に入っているようだ。
「じゃあこれにしよう。足のサイズ、いくつかな」
展示品を履かせてみると少し大きいようだった。店員にいくつかサイズを持って来させ、結局少女の足のサイズは一番小さいサイズ、36.5(23cm)を選んだ。
黒ずんで汚れている、元はピンクのラメ色だったと思われる靴を包んでもらった。
「じゃあ三階にある下着売り場に行こうか」
私達は伊勢丹三階にある下着売り場に向かった。
店員に少女の胸や腰、ヒップのサイズを測ってもらった。胸はアンダー六十四センチ、バスト八十八(65Fカップ)、ヒップ八十五(Mサイズは八十七センチからで、ちょっと緩い。ジュニアサイズのほうが良いか?)だった。トリンプのエッセンス002、ブラジャーとレギュラーショーツの白い物を選ぶ。
ブラジャーを着けたことがない少女は店員に着け方を教わっていた。
身体にあったブラジャーとショーツを着けた少女は胸と尻がぽよんっと出っ張り、愛らしい体型になった。
「可愛らしいですね」
店員がお世辞ではないと思われる言葉をかけてくる。
「うん、可愛いよ」
「…………カワイイ」
少女は真っ黒な感情のない瞳で白いブラジャーをじっと見つめていた。
■続く