「ゆきちゃん」
私は立ち上がった少女の手を右手で持ち、そっと左手を重ねた。
「今までゆきちゃんの周りの大人達は警察から逃げなきゃならない事をしていたかもしれない。でもゆきちゃん自身はしていないんだよ」
「でも……」
「大丈夫だから座って。この人はゆきちゃんを守るために来た人だから」
少女は少し納得したような……納得していないような表情で、椅子に座った。
私は口から出任せを言っている。少女の問題が児童ポルノだけだったら少女自身は保護される身で犯罪者にはならないだろう。
しかし盗みや暴力事件を起こしていたら? 私はそれでも少女には責任がないだろうと思った。そもそも少女が学校へ通う義務を親や周りの人間は怠ってきたではないか。そんな物も知らない少女に責任が問える筈がない。まず少女に必要なのは学習とカウンセラーなのだ。
少女が椅子に座ると歌舞伎町巡りから帰ってきたばかりの担当係員が「場所を移しましょうか」と言った。
■続く